フリーランス法の発注実務|取引条件明示・60日支払・禁止行為(コラム41)
フリーランスに記事制作、デザイン、動画編集、システム開発、事務支援などを業務委託する事業者は、契約書の名称だけではなく、取引実態と発注側の区分に応じて「フリーランス・事業者間取引適正化等法」を確認する必要があります。同法は2024年11月1日施行です。本記事では2026年時点の公正取引委員会・厚生労働省の公式案内をもとに、発注前に確認したい義務を整理します。
適用の出発点:誰が「フリーランス」に当たるか
法が保護する「特定受託事業者」は、業務委託の相手方のうち従業員を使用しない個人事業者、または代表者以外に役員がおらず従業員も使用しない法人などです。「法人なら対象外」「発注者もフリーランスなら法律と無関係」とは限りません。取引の委託内容・受注者と発注者の事業形態・従業員の使用状況を確認します。雇用契約なのか業務委託なのかも、名称だけでなく実態に照らして考えます。
1.発注時の取引条件は、直ちに書面・電子的方法で明示
対象となるフリーランスへ業務委託するときは、発注事業者が従業員を使用していない場合も含め、原則として直ちに取引条件を明示する必要があります。メールやSNSのメッセージなどの電磁的方法、または書面が対象で、口頭だけの説明では足りません。
- 発注者・受注者の名称と業務委託日
- 業務内容・納品物、納品や作業の期日・場所
- 検査を行う場合の完了期日
- 報酬額、支払期日、必要に応じ支払方法
報酬額などを当初確定できない場合の扱いには要件があります。契約書を作る場合も、必要事項が記載・伝達されているかを確認し、変更時の合意・連絡履歴を残すことが実務上有益です。電磁的方法で明示した場合に、受注者から書面交付を求められたときの義務も個別に確認します。
2.報酬の「60日以内」には適用要件がある
法上の特定業務委託事業者に該当する発注者は、原則として給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに報酬を支払います。「60日後まで支払わなくてよい」という猶予の意味ではありません。請求書の受領や検査の遅延だけを理由として、法定の支払期日を当然に後ろ倒しできるわけでもありません。再委託等には特則があるため、発注者の該当区分・再委託の有無を区別してください。
3.1か月以上の業務委託には7つの禁止行為
一定の発注者が1か月以上継続する業務委託を行う場合、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しという7類型の行為が禁止されます。単に契約書に「修正回数無制限」などと書けば何でも許されるわけではありません。期間の数え方、発注者区分、受注者側の責任の有無などを個別に確認する必要があります。
4.6か月以上の委託と就業環境の整備
一定の発注者については、募集情報の的確な表示や、ハラスメント相談窓口の整備などの義務があります。6か月以上の業務委託については、申出に応じた育児・介護等と業務の両立への必要な配慮、契約解除・不更新時の原則30日前までの予告などが規定されています。予告の例外や理由開示の条件もあるため、解除・更新を一律の扱いにしないでください。6か月未満の場合も配慮の努力義務など、制度ごとに適用範囲が異なります。
5.発注担当者向けの実務チェック
- 受注者が法の対象者か、発注側は従業員を使用しているか
- 発注内容・期日・検収・報酬額・支払期日を書面やメッセージで明示したか
- 請求書の提出日ではなく、給付受領日を含む支払期限を把握しているか
- 追加修正・変更・キャンセル時の負担と合意を記録しているか
- 委託期間が1か月・6か月の基準に該当するか
- 募集表現、ハラスメント相談対応、育児介護への配慮、終了予告を必要に応じ整理したか
発注条件の整理や契約書類の準備については契約書・各種書類作成、雇用か業務委託かの整理や社内労務管理については労務管理相談をご参照ください。これらの案内は、特定の紛争代理・訴訟代理・弁護士業務を当事務所が担当すると約束するものではありません。対応可否・依頼範囲は事案別に確認します。
公的資料・法令の確認先
情報確認日:2026年11月2日。適用対象・例外・期間要件は事案によって異なります。個別の法的判断や紛争解決は所管行政機関や必要に応じ弁護士等にご確認ください。

